記者の眼記者の眼

第290回 (2025年4月2日)

 毎年この時期になると憂鬱な気持ちになる。自分の英語力のなさを思い知らされるからだ。私が担当するLPGの業界では、毎年3月に国際カンファレンスが日本で行われる。それに合わせて、世界中から産ガス社やトレーダー、輸入業者、需要家が一斉に東京に集まり、盛んに交流する業界の一大イベントだ。

 

 私たちにとっても普段チャットや電話でしかやりとりすることのない海外のプレーヤーと実際に顔を合わせ、親交を深める絶好の機会である。しかし、英語での会話がネックとなる。短いマーケットトークであればそれほど苦労しなくなったが、雑談を交えながらの会話となると勝手が違う。過去の会食では、会話に全神経を集中したため、食事の味がわからず、出されたコーヒーを一口も飲めない、なんてこともあった。挙句、「日本語でもいいよ」などと相手に気を遣わせ、恥ずかしいやら悔しいやらでいたたまれなくなった。

 

 そんな苦い経験を重ねてきた3月だが、今年は少し違った。多くの人たちと会い、苦労しながらも言葉を交わしたあとに湧き上がってきたのは、「楽しかった」というこれまでなかった気持ちだった。別れ際に自然に笑顔で相手と握手できたのも初めての経験だった。恥をかいてきたのは無駄ではなかったと思えたのは大きな戦果だ。忙しいなか、わざわざ時間を割いてくれた方々に感謝の気持ちを抱きつつ、来年は相手にとっても楽しかったと思える時間になるよう、英語力を磨いていきたい。

  

(柏原)

 

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