第249回 (2024年6月12日)
NHKの連続テレビ小説「虎に翼」は、昭和に法曹界で奮闘するヒロインの姿を描いている。昭和初期は弁護士といえば男性が当たり前だった時代。しばしば好奇の目にさらされ、男性と比べて試験に通過することも難しい。それでも、女性弁護士そして裁判官の草分け的存在としてたくましく進む姿が印象的だ。
ドラマの中では弁護士となった後に、結婚や妊娠によってキャリアの継続が困難となっていく様子が描かれている。かつては「ガラスの天井」と言われたが、最近では「壊れたはしご」という表現も使われる。そもそも女性が昇進する際の機会が閉ざされている様子を指す。
メディア業界ではこの状況がより顕著にみられるように思う。ロイター研究所は今年3月「Women and leadership in the news media 2024」を公表した。調査を実施した12カ国の240の有力媒体のうち、日本において女性が編集長を務めているものはゼロという。対象国の平均は24%。米国の43%と比較すると歴然の差がある。
日本のジェンダーギャップ指数は146位中、125位と低い(2023年時点、世界経済フォーラム発表)。女性の教育、健康の値は高い一方で経済や政治への参画の値が極めて低い現状がある。メディアの責任者の立場に女性が少ないことが、女性の経済、政治参画を遅らせることに繋がっている気がしてならない。
ドラマでヒロインは人一倍の努力を重ね、タイトルのようにまさに「虎」のように進む。現代ではその「強さ」、言い換えれば陰ながらの過剰な努力や犠牲、鋼の精神力がメディア業界における女性のキャリア継続に必ずしも必要ではないと信じたい。メディアに携わる女性の一人として、男性も女性もそれぞれ豊かに人生を歩めるような道をこれからも考えていきたい。
( 和気 )