第228回 (2024年1月17日)
多くの人々は、依然として物価高を懸念する。確かに、1年以上にわたり、世界中の中央銀行がインフレを抑制するために金利を引き上げてきた。こうした対策は一定の効果を上げ、物価の上昇は鈍化しつつある。また、サウジアラビアをはじめとする石油輸出国機構(OPEC)とロシアなど非OPEC加盟国で構成するOPECプラスは、原油の減産を継続しているものの、世界経済の成長が失速し、石油需要の増加を抑制したため、原油価格は急騰しなかった。
しかし、最近の中東における地政学的な緊張により、海上輸送コストが大幅に増加し、再度物価の上昇につながる可能性があると懸念される。イスラエルとハマスの戦争に対抗し、イエメンのフーシ派は紅海を航行する船舶を攻撃している。その結果、欧州とアジア間で貨物を輸送する一部の船舶は、スエズ運河の使用を避け、代わりに喜望峰経由で航路を変更している。
これにより海上運賃が増え、消費者に転嫁される可能性があるとみられる。また、喜望峰経由で欧州とアジア間を航行する場合、スエズ運河経由に比べて時間がかかるため、貨物の到着が遅れることも予想される。
緊迫する中東情勢が緩和し、早く正常に戻ることを心から願っている。
(チーセン)