キリンHD=自然由来の炭素クレジット活用へ、選定基準を策定
キリンホールディングス(HD)はこのほど、グループのカーボンクレジット(炭素クレジット)利用の取り扱い方針を策定した。温室効果ガス削減の目標達成に向けた取組でグループの供給網(サプライチェーン)内では削減しきれない「残余排出量」を埋め合わせるため、方針に基づき自然由来の炭素クレジットを優先して充てることを検討する。 炭素クレジットを利用する際、生物多様性への影響や地域社会へ共通便益を重視する価値観や質をグループの各企業で確認・実行できるように、チェックリストを方針に盛り込んだ。基準のうち、ビンテージ(発行年)については、原則、発行から5年以内の炭素クレジットを活用する。炭素クレジットの創出地についても、温室効果ガス削減・吸収プロジェクトの実施場所が明確であることや、事業活動に関連する場所であることを利用の判断基準とする。3月24日の発表によると、主な選定基準は以下のとおり。 ・プロジェクト種別:ネイチャーベース(自然由来)の炭素クレジットを優先的に選定 ・追加性:温室効果ガスの削減や吸収が新たな行動を促すものであることを保証 ・永続性:削減や吸収が長期間にわたって維持されることを確認 ・透明性と信頼性:データの公開状況や第三者検証の有無を精査 ・ガバナンスと二重計上の回避:管理体制やリスク管理の実施状況を確認 ・コベネフィット(共通便益):環境と社会に好影響を与えるプロジェクトを選定 ・ビンテージとエリア:発行年やプロジェクトの実施場所を考慮 取引市場では現在、課題として低品質の炭素クレジットの場合、実際には温室効果ガス削減に寄与しない可能性があり、利用する企業の信頼性が損なわれる危険性がある。キリンHDは、炭素クレジットの市場動向を調査した結果、「森林保全や持続可能な農業に由来する炭素クレジットには環境再生や地域社会の持続的な発展を支援する手段として一定の有効性がある」と判断した。 書面による確認に加えて、炭素クレジットの各種リスクを低減するためプロジェクトの実地視察も可能な限り実施するという。プロジェクトの開発・運営や炭素クレジットの販売を行う企業や団体に対してもインタビューを行い、炭素クレジットの内容について検証する。さらに、今後も炭素クレジットに関する議論など世界の動向などを踏まえ、選定基準の見直しや高度化を図る。
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