東証=Jクレジット取引、「農業」区分を導入 ― 1月から2種追加
東京証券取引所はカーボン・クレジット市場のJクレジット取引に「農業」区分を導入する。来年1月6日から売買が始まるのは、「農業(中干し期間の延長)」と「農業(バイオ炭)」。東証は中干しやバイオ炭の機能を活用した温室効果ガス(GHG)削減プロジェクトの登録件数や承認量の増加などを踏まえ、現在、「その他」の区分に含まれている両種を分離する。市場の流動性と利便性の向上が期待される。基準値段と呼ばれる取引水準の目安は、年明け6日午前の商いに備え、中干しが二酸化炭素(CO2)1トンあたり5,000円、バイオ炭が4万円と設定された。 水稲の栽培期間中に田の水を抜いて乾かす「中干し」期間の延長により、水田から発生するメタンを削減することができる。効果は7日間の延長で約30%の削減。GHGのうち日本のメタン排出量はCO2換算で2,740万トン(2021年)。農業由来は81%を占め、そのうち5割以上が稲作を発生源とする。気候変動政府間パネル(IPCC)の報告書ではメタンの温室効果はCO2の28倍。CO2に次いで温暖化に与える影響が大きいメタンの削減は、カーボンニュートラル(CO2排出量の実質ゼロ)の取り組みで重要な課題となっている。 一方、生物資源を材料とするバイオ炭は、農地の土壌改良効果とともにCO2を貯留する機能を持つ。バイオ炭によるCO2の吸収・貯留は、大気中から直接CO2を除去する技術(ネガティブエミッション技術、NETs)のひとつ。2050年のCO2実質ゼロに向けて最大限に削減をしたとしても最終的に排出が避けられない分(残余排出)は、IPCCの試算によると日本が年間約0.5~2.4億トン(CO2換算)とされる。実質ゼロを実現するため、残余排出を除去する手段としてNETsに対する期待が大きい。 東証の農業区分2種の導入に伴い、9件の既存プロジェクト(12月6日時点)が1月6日から新設の売買区分に移行する予定。内訳は5件が中干し、4件がバイオ炭。中干しのプロジェクト実施者は、クボタ大地のいぶき、グリーンカーボン、三菱商事、フェイガー、NTTコミュニケーションズ。バイオ炭は、日本クルペジ協会(2件)、トーイング(2件)。 主なJクレジットの直近の水準は12月12日現在、省エネルギー由来が2,285円(9日約定)、再生可能エネルギー(電力)が5,900円(9日)、再エネ(電力:木質バイオマス)が2,550円(4日)。他方、約定頻度が低いかこれまで取引が成立していないクレジットの13日午前向け基準値段は、再エネ熱が2,201円、再エネ(混合)が1,990円、森林が5,700円、その他が1,150円。1月6日以降、その他には、引き続き「工業」や「廃棄物」などが含まれる。
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