新春特集=2025年LNG相場、一段と割安に
2024年のLNGは北東アジア着のスポット相場が1~11月平均で百万英国熱量単位(mmBtu)あたり11.63ドルと、前年同期比2.26ドル安で推移した。23年末から24年初めにかけて北半球で暖冬が続いたため、消費国における在庫の消化が停滞。そのため、欧州各国は春先から容易に在庫を積み上げることができ、夏の酷暑のなかでも、欧州とアジアでスポット玉の争奪戦が発生することはなかった。日本着のスポット相場(DES Japan)が最高値を記録したのは11月20日の15.35ドルだったが、23年1月の最高値23.65ドルを35%も下回っていた。下図は24年1~11月における日本着相場と、近年、LNG価格を誘導しているオランダのTTF(Title Transfer Facility)市況を比較したグラフで、いずれもおおむね8.00~15.00ドルのレンジ内で推移していたことが分かる。
下落基調が続くと予想される背景には、いくつかの要因がある。一つは年初の供給懸念だ。ウクライナを経由して欧州に供給されるロシア産の天然ガスは、24年12月で契約の期限を迎える。ウクライナはこの契約の延長を望んでおらず、欧州へのガス供給は1月から減少すると見込まれている。そのため、TTFの1月限は供給不安を受けて買いが入りやすくなり、手前の価格が高くなることで、バックワーデーションが形成されているとアジアブローカーは指摘する。 一方で、LNGの新しい生産プロジェクトが立ち上がることで、世界的に供給が増え、価格が安くなるとの見方も、市場関係者の間で広く共有されている。LNGの需給バランスはもともと、25年から米国で次々と新規プロジェクトが始まり、緩和に向かうとみられていた。20年以降のコロナ禍や人件費を含めた建設費の増大などで各プロジェクトの開発には遅れが生じたものの、米プラークミンズ(Plaquemines)プロジェクト(年産1,330万トン)が24年末から操業を始めるほか、LNGカナダプロジェクト(年産1,400万トン)も25年夏には出荷を開始する見通しだ。
需要面では、東南アジアと南アジアの伸びが期待される。ただ、相場に大きな影響を及ぼすのは輸入量が多い中国と欧州勢だ。この点に関しては「冬場の天候がすべて」と中国の需要家が語るとおり、24年末から25年初めにかけて、北半球でどれだけ寒波が長く続くかに左右される。それでも、「中国が受入タンクを増設して備蓄能力を強化しているため、極端な需給逼迫は考えづらい」と日本の商社は指摘。25年1~3月における北東アジア着のスポット市況が15.50ドル前後で推移するとの予測に対して、「もっと低い方が需給の実態に見合う」との声が市場関係者から寄せられている。 |