原油相場以外の注目点として、複数アナリストは「天然ガス(LNG)相場」を挙げている。三菱UFJリサーチ&コンサルティングの芥田知至主任研究員は「上昇傾向のLNG相場がさらに上昇するようだと原油に影響する可能性もある」との見方を示した。
さらに、エネルギー・金属鉱物資源機構の野神隆之首席エコノミストは、「LNG価格が原油相場の値動きを大きく左右する」と指摘している。野神氏によると、LNG価格が上昇すれば、アジアや欧州でLNGの消費敬遠傾向が強まる反面、価格が下落すれば、各地域で消費が換気されるとしている。「25年の北東アジアLNG価格はおおむね100万Btuあたり7~16ドル中心のレンジで変動する」と同氏は指摘した。足元ではウクライナやロシア、さらに中東情勢、トランプ大統領の関税政策、中国経済の不透明感などが上昇要因として散見されており、25年も石油への代替需要が発生しやすいという。
楽天証券経済研究所の吉田哲コモディティアナリストは「米国CPI(消費者物価指数)のエネルギー部門の実数値に注目」と語る。 同氏によれば、中央銀行を含めた市場関係のほとんどはCPIを前年同月比で確認しており、常に直近1年分の事象のみ考慮され続けていることが慣例となっているという。 一方、米国CPIのエネルギー部門の実数値は、おおむねWTI原油の相場動向と同じ軌跡をたどっており、22年年末以降は「高止まり」しているようだ。低水準だった15年や20年に比べると、足元のWTI原油は2倍程度、米国CPIのエネルギー部門の実数値は1.6倍程度高いという。実際、前年同月比でインフレが鈍化しているように見えるのは、原油相場がウクライナ戦争勃発直後の22年に付けた異例とも言える高値から安くなり、その後、レンジ内で推移していことが要因と同氏は分析している。続けて「真のインフレ撲滅はWTI原油が15年や20年の水準である40ドル程度に暴落した時に実現するだろうが、そのタイミングは25年ではない」と吉田氏は結んだ。 なお、「ガスの脱ロシアが想定どおり進むのかに関心がある。DX絡みで世界中の熱源争奪戦が加速するなか、日本でも原子力発電の見直しが進むのかどうか」(マーケットリスク・アドバイザリーの新村直弘共同代表)との声も聞かれた。トランプ政権下で「再生可能エネルギーやEV(電気自動車)の推進具合に注目している」(野村證券の高島雄貴エコノミスト)との声もあった。
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