新春特集=2025年の原油市場、供給過多が顕在化
石油輸出国機構(OPEC)と非OPEC主要産油国で構成する「OPECプラス」や、OPECプラス非加盟国による生産拡大が見込まれる2025年の原油市場は、中国経済の低迷が長期化するなか、供給が過剰になる可能性が高い。 2024年6月、OPECプラスは、日量220万バレルの自主減産を廃止する方針を打ち出した。月ごとに日量18万バレルの増産を行い、減産幅を段階的に縮小する計画だが、OPECプラスは、これまで3度にわたり延期を発表。増産開始は2025年4月に持ち越された。これ以上の延期は、アラブ首長国連邦(UAE)やイランなど、増産に前向きな加盟国による反発を招きかねない。実際、2023年12月には、協調減産の規模拡大に難色を示したアンゴラがOPECプラスを脱退している。加盟国間の結束が乱れた過去には、盟主サウジアラビアがスイングプロデューサー役を放棄し、一転して大規模な増産に踏み切った事例もある。OPECプラスとしての連帯を維持するためにも、2025年における増産計画の履行は既定路線といえる。 OPECプラス非加盟国の台頭も無視できない。2015年に巨大油田を発見した南米のガイアナは、原油生産に邁進している。アフリカのニジェールは、2024年5月にメレク原油の輸出を開始した。6月には、セネガルでサンゴマール原油の生産が始まった。カナダでは新たにトランス・マウンテン・パイプライン(Trans Mountain Pipeline)が開通し、アクセスウェスタンブレンド原油(AWE)やミックス・スイート・ブレンド原油(MSB)の輸出が活発化している。そのほか、アルゼンチンやブラジルも産油量を伸ばしている。 米国の原油生産も拡大する見通し。エネルギー価格の引き下げを公約に掲げるトランプ次期大統領は、石油生産や化石燃料の利用拡大に極めて前向きだ。米エネルギー情報局(EIA)は、2024年11月に公表したエネルギー見通しで、2025年の米国の原油生産量が日量1,353万バレルに達すると予想した。これは、過去最高を記録した2023年(日量1,293万バレル)を大幅に上回る水準。一方、対イラン制裁の強化によって、イランからの原油供給は減少するかもしれない。2017年のイランの原油生産は、日量490万バレル前後で推移していたが、第1次トランプ政権がイラン核合意を離脱したあと、2019年には日量350万バレルに急減した。ただ、イラン産原油の主な買い手である中国は、ロシア産原油によって不足分をカバーすることができる。したがって、2025年にイラン産原油が減少しても、市場への影響は限られそうだ。さらに、トランプ氏は、ロシアとの対話路線を重視しており、対露制裁の一部が緩和すれば、ロシアからの原油供給は増える可能性すらある。 また、世界最大の原油輸入国である中国の景況次第では、原油の供給余剰感が一段と強まる事態も想定される。トランプ氏は、ほぼすべての中国製品を対象に追加関税を課すと宣言している。これによって中国経済が打撃を受ければ、同国の原油需要に回復は期待できない。トランプ新政権による通商政策と、中国政府の対応を注視したい。
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