第178回 ~二酸化炭素で「天然ガス」を作る ~の巻(2021年8月11日)
世界中で地球温暖化防止政策が加速しているね。
豪雨や猛暑といった異常気象が頻発するようになって、これまでのようにエネルギーを徒に浪費することはもうできないのだと改めて実感するわ。
政府はエネルギー基本計画の見直しを進めているけれど、日本でも太陽光や風力などの再生可能エネルギーの比率を大きく上げることが、2030年度の新たな電源構成の原案に盛り込まれるみたいだね。
火力発電の比率をどの程度下げられるかが論点のようね。ところで、二酸化炭素をほとんど排出しない火力発電ができるかもしれないって知ってる?
水素やアンモニアによる火力発電のこと?
それもあるけれど、既に使っているLNG火力発電のことよ。
どうして?確かにLNG火力発電は石炭や石油系燃料に比べて二酸化炭素の排出量が少ないとはいえ、二酸化炭素を排出している事実には変わりはないでしょ?
そうね。天然ガスを燃焼させれば二酸化炭素ができてしまうわ。でもその二酸化炭素を回収・利用して、再び天然ガスの原料となるメタンガスを生み出す試みがあるのよ。
永久機関のようなことができるの!?
永久機関は飛躍しすぎよ!この技術は「メタネーション」と言って、二酸化炭素と水素を化合させてメタンを作る技術よ。二酸化炭素と水素からメタンを合成する技術は、1911年に仏の化学者サバティエが発見したもので、サバティエ反応と名付けられているわ。
化学でメタンの合成は習ったけど、エネルギー源になるほどの可能性をを秘めていたんだ!
といっても、世界で本格的に研究が始まったのは2011年からだから、まだまだ課題は多く残っているわ。
まだ発展途上の技術なんだね。ちなみにどうやって作っているの?
さっき紹介したサバティエ反応では、水素と二酸化炭素を高温高圧状態にすると生成されるそうよ。この時、触媒としてニッケルもしくは酸化アルミニウム上にルテニウムを固定させたものが必要となるわ。
高温高圧状態にする必要があるんだね。でもそれだと温度を上げる過程で二酸化炭素を排出してしまうと思うよ?
そうなの。しかもメタンを生成する時に同時に反応熱も生成してしまうから、エネルギー効率はそこまで高くないの。それに水素を生成する際も電気分解などエネルギーを消費する必要があるわ。だから今新しいメタネーション技術の研究が進められているの。最近注目されているのは大阪ガスの「SOECメタネーション」よ。
SOEC?今までと何が違うの?
メタンを生成するプロセスは今までと仕組みはあまり変わらないけれど、水素の生成効率をSOECという装置で高めることができたの。SOECというのは「Solid oxide electrolysis cell」の略で、「固体酸化物型電解セル」と言うそうよ。でもSOECメタネーションのすごいところはもう1つあるわ。
もったいぶらずに教えてよ。
ごめんなさい。それはメタン生成時の反応熱を再利用できる仕組みよ。先ほどのSOEC装置はただ水を電気分解するのではなくて、水を加熱して水蒸気にしてから電気分解しているの。その際に必要な熱エネルギーにメタンの反応熱を使用することで、エネルギー効率が飛躍的に上昇したの。
エネルギーの無駄が少ないのがSOECメタネーションなんだね!二酸化炭素は今まで公害物質のような捉えられ方をしていたけど、これなら有効活用できる資源に見えてくるね。
だからと言って二酸化炭素の排出量を抑えていく必要があることに変わりはないわ。技術革新は資源を浪費するためにおこなっているわけではないのだから。
話の締め方がかなり啓蒙的だね
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(文:朝比奈 )
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