第166回 ~メタンハイドレート実用化への道 ~の巻(2021年2月17日)
つい先日、日本で電力が足りなくなりそうになったというニュースは耳にした?
うん、話題になっていたね。家庭の電気代を市場連動型の料金プランで契約している人は、びっくりするくらい電気代が跳ね上がってしまうみたい。
自分が市場連動型で契約していたらと思うとぞっとするわね。
でもなんでそんなに高くなってしまったの?
冬場の電力の需要期に液化天然ガス(LNG)価格が暴騰してしまって、日本の電力会社がLNGを調達するのが難しくなってしまったことが要因として挙げられるわ。
そうなんだ。確かに日本ではガスも石油もほとんど産出しないから、輸入に頼りきりだもんね。そういえば日本の近海にはメタンハイドレートが埋まっているってニュースで見たことがあるよ。もうずいぶん前に聞いた話だから、そろそろ実用化されていないかな?
うさりんは記憶力がいいね。でも残念ながら実用化にはまだ時間が必要よ。政府は2023年度以降に再度、海洋産出試験を実施を予定しているけれど、実用化には10年単位で時間がかかりそうよ。
まだまだ先の話みたいだけど、実用化が待ち遠しいなぁ。もし試験に成功したら輸入に頼らなくてもエネルギー資源を確保できて、日本は「資源大国」になれるんでしょ?
そうね。日本近海に埋まっているメタンハイドレートはなんと、年間天然ガス使用量の100年分に相当すると言われているわ。でも日本が資源大国になる日が来るかは現時点で何とも言えないね。
どういうこと?
大きく分けてコスト面と開発リスク面の問題があるわ。コストの点はわかりやすいわね。まだまだ実験段階にあるから、メタンハイドレートから天然ガスを採掘するとなると、輸入しているLNG価格とは比較にならないくらい割高になってしまうのよ。
米国などで採掘が盛んなシェールガスも、水圧破砕法が開発されたことで、コスト面の問題をやっと解決できたみたいだし、メタンハイドレートの実用化も採算が取れなければ難しいね。もう1つの開発リスクって何?
それはメタンハイドレートの充分な埋蔵量が分かっていないことよ。
え?分かってるんじゃないの?さっき日本の天然ガスの年間使用量の100年分埋まっていると自分で言っていなかった?
それは推定の資源量であって、実際に掘り出すことのできる可採埋蔵量はいまだに見通せていないわ。何せメタンハイドレートが眠っているのは水深500~1,000メートルの海底だから、調査するのも一苦労よ。だから研究者の中には資源量の10分の1程度しか掘り出せないのではないかと言う人もいるし、そもそも推定資源量も100年に満たないとの主張もあるわ。もし低コストで掘り出すことができるようになっても、ほとんど掘り出せないのなら努力が水の泡になってしまうでしょ?
こんなに時間をかけて努力してるのに、メタンハイドレートが泡沫の夢になったら嫌だな…
だからこそ産官学が連携して資源量と埋蔵量の調査や採掘技術の確立に向けて日々研究が進められているわ。ちなみに今年は米国アラスカの永久凍土で、メタンハイドレートの陸上産出試験を日米共同で実施する予定よ。
日本だけでなく世界の技術を集めた一大プロジェクトなんだね!ぜひとも良い結果が出るといいなあ。
そうね、吉報が届くのを気長に待ちましょうね。
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(文:朝比奈 )
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