第141回 ~新型肺炎と石油の関係~の巻 ~の巻(2020年2月26日)
ハックション!
ちょっと、うさりん。マスクしているみたいだけど、そのくしゃみってまさか新型肺炎じゃないよね!?
違うよ。花粉症さ。今年は暖冬で花粉症の季節も早まっているから、新型肺炎と混同されるとつらいなあ。
そうだね。ところでそのマスクも石油と無関係じゃないって知ってる?
知っているよ。マスク生地の不織布には石化製品のポリエステルが使われている。その需要が急増して、価格が上がっているとか言いたいんでしょ?
それもあるだろうけど、ごく一部の需要の話ね。もっと広い視野でみると、新型肺炎の影響で経済活動自体が停滞しているから、石化製品だけでなく、石油製品全体の需要が後退しているわ。
なるほど。じゃあ石油製品の相場は急落ってことだね!
ところが、それもそうとは言い切れない部分もあるの。確かに需要サイドから見ればそのとおりだけれど、供給サイドから見た場合も考えなきゃいけないでしょ。
中国などでは今、新型肺炎の影響で工場で働く人の数も減っていて、石油製品や石化製品の供給も引き締まっているってことか!
そうね。中国をはじめ台湾や韓国などアジア各地の石油会社は、製油所の稼働を抑制しているわ。
つまり、需要も供給も減って、結局価格は変わっていないのかな?
マーケットはそんな単純ではないわ。まず、コモディティである原油は、同じくリスク資産である株価に連動しやすい面があるわ。25日にNYダウ、日経平均が一時的に下落し、世界同時株安の様相を呈したわ。この場合、原油価格も大きく落ち込むと見られたけれど、石油輸出国機構(OPEC)が協調減産を継続することで相場は下支えされる公算が大きいわ。
じゃあ、やっぱりバランスじゃないか。
でも、川下の石油製品の需要は軒並み弱含んでいるから、そう簡単な話しではないでしょうね。
うむむ、じゃあやっぱり相場は急落だ!
もう少し冷静になって!少し前の市場では、韓国や日本など北東アジアで船積みする硫黄分0.001%の軽油相場は、むしろ強含んでいたわ。
え、何で?
中国石油各社が製油所の稼働率を引き下げるとの方針を発表し、供給が引き締まるとの見方が強まって、値ごろ感から買付けの動きが強まったのよ。
もう分からないや。じゃあ、ガソリンは?さすがに人の移動が減るだろうから、ガソリンの需要は後退するでしょ!
そうね、短期的にはそうかもしれないわ。でも先行きは、むしろ人々が新型肺炎の感染リスクから公共交通機関での移動を避け、個人の乗用車で移動するかもしれない。そうするとガソリン需要は増加する―なんて見通しも聞かれるわ。
うーん、眉唾物だなあ。
とにかく、石油関連市場が経済や人々の営みと密接に関わっていて、相場動向がそんな単純じゃないって基本が分かったかしら?市場動向が気になったら、ぜひリム情報開発のマーケットレポートを読んでみてね!
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(文:横井 )
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